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あたらしいふくを手にいれるまえに

4月はあたらしい環境になじむための、あたらしい服が必要になる

時期。新入学のこどもにおいては、隣のクラスメイトがもっている

あれこれに心ひかれて、物欲がむくむくと芽生える時期でもある

でしょう。

そこで「ペレのあたらしいふく」。少年のきがえをもってくるという

表紙も大胆な古典絵本です。


昔むかし、舞台はスウェーデンのちいさな山村。主人公のペレ少年

は長閑なその村で、1頭の子羊とともに暮らしています。そんなペレ

君も成長期。手持ちの服は寸足らずになり、ひとまわり大きなサイズ

がほしくなるのですが、そこでどうしたかといいますと、まず羊の毛

を自らの手で刈り取ります。そこからがこのお話のテーマ。それを

祖母にさしだし、畑の草取りをするかわりに梳いてもらうのです。

そしてその毛はもう一人のおばあちゃんへ。牛のばんをした対価

にペレ少年、紡いだ糸を手に入れます。次は…その次は…。

最終的にジャストフィットの服をあつらえてもらうのですが、その

流れ、やりとりのなかでペレ少年にいっさいの迷いなし。

なにかをお願いする時には対価が求められるということを、彼は

幼くして心得ているのです。要求同士が釣りあうかどうか、計算

したりもしないし、手にあまりそうな肉体労働を求められても嫌

な顔ひとつしません。


母親によってもらった糸を嬉しそうに染めています。 


小さな身体でカヌーをのりこなし、隣の町までお遣いに。 


若くして身につけた礼儀と身体の強さと従順さを武器に、お金

をいっさい使うことなく背広を手に入れ、誇らしげなペレ少年。

羊も喜んでおります。 

お金にたよらずに手に入れることもできる。

昔の話でしょ? たしかにそうですが、1912年の発行から

100年を経てなお読みつがれているという事実は、ペレ少年

の心得が現代にも通じる生きるセンスであることを物語って

いる気がします。

良いこのみんなはどんどんマネ…のしにくい現代ではあり

ますが、このストーリーを知っておくことが財産と思える日

がいつかくるのではないでしょうか。

福音館書店 1296円

…なんてまじめな紹介文…と我ながら戸惑いの午後。 

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